最近読んだ本です

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ちょうちん屋のままっ子 斉藤隆介  「ベロだしチョンマ」「モチモチの木」など大好きな作品がたくさんの斉藤氏の長編童話。 提灯屋の長男なのに継母にいじめられて死のうとしたことがきっかけで、秋田の田舎から江戸に出て、植木屋の弟子から料理屋と自分の道を探していくサクセスストーリー(!??)。江戸から明治に変わる時代の話ですが、今の時代とまったく重なる想いでした。継母にしても悪い人というわけでなく、進路の選択を本人に任せてくれた最初の親方や、次の職場の板前の心意気、その合間の大きな変革をするお国の事情・・・ 実は「あとがき」は蛇足だと想いましたが、読後感の清々しい、日本人であること、人であることのいい本だと思いました。( 6月 28日)
牡牛の柔らかな肉 連城三紀彦  かなりお久の連城さんですが、やっぱり翻弄されますなぁ。 得度されている連城さんなのに、仏門にいる尼さんをこんな書き方していいの?って思うくらい、裏のありそうな書き方です。本音と計算と美貌をうまく使い回して、マスコミでメジャーになり、ついには政治を目指してしまう香順の過去は、最後の最後まで誤解させるように書いているし、それがずっと意味深だし〜〜 なんだかんだ、引っぱられて読んだのは間違いないんですがね(^^;ゞ( 6月 25日)
小美代姐さん愛縁奇縁 群ようこ  よく拝見するお名前ですが、なんとお初の群氏でした。 意外と「なんだこりゃ?」ですが。感情の起伏が少なくて読みやすいと言えば読みやすいのですが、新聞記事のようでもあります。小美代姐さんの一代記でありまして、願ってなった芸者ですが戦争が絡み、小さな家で家族と同居の新婚時代から始まって、亭主の浮気、子供を抱えての芸者復帰、様々なダンナの遍歴〜〜〜 50年間くらいの話ですが、この私でさえ時代の違いにびっくりです。でもありだろうなぁ。。と。(たとえばダンナさんたちの様々な性格なども含め)フィクションには感じられないリアルさがあって、運不運とかも感じてしまいました。( 6月 20日)
 

星間商事株式会社社史編纂室

三浦しをん  商社勤めの川田が、創立60年を越えた会社の社史を作るにあたってぶつかっちゃう会社の過去やら同僚(上司)との関わりやら、趣味のコミケやら友情やら、ヒモの切れた凧みたいな恋人のことやら〜〜〜 そんなに深刻な問題じゃないんじゃない?とか思いながら当事者じゃないからね、と、まるで身近な現実のように感じて笑っちゃう私。これって「ユーモア小説(なんてジャンルが今でもあるのか?)」ですよね(^m^)( 6月 16日)
四十九日のレシピ 伊吹有喜  面白かった〜 久々に泣いてしまった。妻、乙美の死後、食べる気力さえなくした初老の熱田のところにやってきた井本とハルミ、夫との離婚を決意して実家に戻ってきた継子の百合子・・・ 乙美の人生をなぞりながら人の心に触れあえる一冊。それは辛い関係もあるけれども、染みこんでくるような優しさもあり、気持を綺麗にして貰えたように思えました。しみじみと嬉しくなる、そんな最後でした。( 6月 7日)
天海の秘宝(上・下) 夢枕獏 上巻では法螺右衛門と十三の友情に「陰陽師」を重ねてみたしたけれど、天海の展開はだんだんSFちっくに。 途中からどうしても高橋克彦氏を読んでいる気がしてならなかったのです (^_^;)\('_') しかし後書きにあった”楽”は、私なんぞでは口幅ったいのですがとてもよく分かりました。自分の中で渦巻いている想いを吐き出さないと、押しつぶされてしまいそうで、追われるように文字を連ねる・・ずっとそんなだったのに、今はふいに”楽”になってしまって投稿戦士を辞めてもなんの罪悪感も感じなくなったし。その分生きてる感じも希薄で、消化人生になってしまいましたが(^^;ゞ 夢枕さんはやっぱり楽になってはいけないのかも。( 6月 5日)
わたしと小鳥とすずと金子みすゞ童謡集 金子みすゞ矢崎節夫(編)  同僚がいきない会社で、ぽん!と貸してくれました。みすずさんの童謡をこんなにたくさん読んだのは初めてです。感受性の鋭さと、目線の位置、優しくて繊細な感性、涙をこぼしたり、胸がいっぱいになって読み進められなくなったしもしましたが、でもその生い立ちと人生の終え方を思うとき、切なくて悔しくて、また泣けてくるんですよ。( 6月 1日)
仏果を得ず 三浦しをん  (◎_◎)((´д`))文楽の世界を、三味線と義太夫の新コンビが師弟関係や恋愛なんぞのプライベートから浄瑠璃の登場人物の解釈へと進む、ある意味パターンの短編集ではありますが、これが面白い、面白い思い白い、今まで読んだしをんさんの作品ではいっちばん好きでした。がっつり二度読みましたモン。いやぁ、建クン、惚れてしまったよ、その語り(って、文楽もしらないし、義太夫の語りも聴いたことはないのですが、そんな気持になっちゃうの。)。浄瑠璃の内容そのものは重くて辛くて、いくら解釈が分かってもダメそうですが、人形師の方も含め、大分興味が向いてきちゃいましたよ、どうしましょ===( 5月 19日)
人生激場 三浦しをん  噂では面白いはずのしをんさんのエッセイ集、初めて読みましたが、やっぱり漫画チックで激情的、ノリノリで読ませていただきました。ワールドカップの選手ネタがけっこう多かったのですが、本音と言うよりは言い得て妙、ってなところがウケました。なんだかどんどん填ってしまいそうですね>しをんさん。( 5月 10日)
恐怖のカタチ 大原まり子  最初に岬兄悟さんのあとがきを読んでから本文へ〜 そこそこ恐くて、何がでるか分からないこともあって、怖々おそるおそる読み続けました。こっくりさん、生体離脱、いろいろありますが、友情とか恋愛とか、その裏返しとかの人間関係がメインなので、そういうことではまり子さんらしくなかったかも、です。(5月 1日)
木暮荘物語 三浦しをん  世田谷にある古くてぼろい小暮荘。 そこに住む人たちの周辺での出来事が描かれた連作短編集ですが、男女3人の同居とか、トリマーとそのミチの人の恋愛、覗きが趣味だったり、老境でえっちをしたいだけの管理人・・絶対ありえねぇ!!は今までと一緒ですが、この本はとても現実的でした。文体が変わったのでしょうか?私はこういうタイプが好きなので、とても面白かったです(^-^)(4月 30日)
システィーナ・スカル 柄刀一  はじめての作家さんですが、濃ゆかったですねぇ〜 絵画修復士の御倉瞬介がイタリアで出会う絵画とミステリー。その絵が描かれた時代や宗教なんぞも背景にあり、なかなか意味深な作品でありますが、いかんせん、私には芸術の理解力がない(;^_^A でもみな楽しめました。時間の経過が微妙に行き来して、裏読みも求められている気もしますが、とりあえず感じるままに楽しみました。ミケランジェロの壁画の解釈は、作家さん自身のものかどうかは知りませんが、のけぞったりして(^^;ゞ(4月 25日)
アガサ・クリスティー探偵名作集
巻尺殺人事件
アガサ・クリスティー  子供向けのマープルの短編集ですが、題名に覚えがないので借りてみました。でも全部読んだことがありました。でも子供向けに訳すのも大変ですねぇ〜 オトナの事情もあったりするので、なかなかそういう苦労もおありかと(^m^)(4月 18日)
まほろ駅前番外地 三浦しをん  一作目のサブキャラ(?)の目線で描かれる7編。私が特に好きだったのが「岡夫人は観察する」で、あの岡爺さん、ちゃんと夫なんだぁ、ふ〜ん、岡夫人、よく見てるし、それ、全然分かる!みたいなストイックでちょっと現実から飛んでしまっているような小説の中では実に普通でまた可笑しい(^m^) これも面白かったです。(4月 15日)
小暮写真館 宮部みゆき  「小暮写眞館」の看板を残したまま住宅として引っ越して来ちゃった花菱英一の家族や友人、親戚関係や友情や恋愛やオトナやコドモ・・ 心霊写真や幽霊さんが絡むので、こっちがややファンタジーにもかかわらず、↓しをんさんの小説と違って、やたら現実を感じるのが宮部さんです。大好きな作家さんの小説は読み終わるのがもったいなくて・・ あぁ、面白かったなぁ〜〜(4月2日)
まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん  しをんさん、なんでですかね、こんな日常の話なのに絶対にありえない、ファンタジーみたいな気持になるんです。便利屋の仕事も、多田と行天という人間も、そんなにSFじゃないのに、ちょっと近いパラレルワールドの話みたい・・ それは神去なあなあ日常」でも感じたんだけど、でも面白いです、このキャラたち。映画にでもなったの??(3月 28日)
ハリーポッター死の秘宝(下) J. K. ローリング  3回目なので、じっくりゆっくりあせらず一語一語しっかり読もうと思い、また借りてきました。そしてまたまたハマるワケです(^^;ゞ 剣の所有者の移動が2回読んでもなかなか納得できなかったので、映画の完結編を前にもう一度シミュレーションしてみましょうかと。いや、何度読んでも面白いし、今度は納得できたような、まだ微妙なような・・(;^_^A(3月 20日)
ミステリーオールスターズ 辻真先、北村薫、芦辺拓、柄刀一有栖川有栖、光原百合、綾辻行人、法月綸太郎、西澤保彦・・計23名 本格ミステリ作家クラブ創立10周年特別企画だそうで、短編24編とお歴々の連作一遍です。初めての作家さんも多かったのですが、みな粒ぞろいでよかったです。 「ある終末夫婦のレシート」なんぞは小説というよりゲームみたいでしたね。 (3月18日)
みつめる女 大原まり子  わ!えっち!エロ過ぎるぜ、まり子さんの短編集・・と思ったら、後書きに「これはポルノグラフィーです」とか書いてありまして(^^;ゞ でもなんとなく女性側からのいやらしさであります、じとじとじっとり〜〜〜(3月 15日)
もしもし下北沢 よしもとばなな 肉親の理不尽な死から始まるのはいつものばななさん。 でも今回は6番目の感覚は少なくて、それにぎっしり母親が側にいて、私が実際に知っていること(芸能人や映画や)が実名で出てきて、そして長いのです。下北沢には行ったことがないけれども、歴史ということでは田舎の私も共感できるし、人を作る食べることの大切さ、楽しさもわくわくするくらい嬉しく入ってきました。恋愛はちょっと微妙だけど全然ありだったし、親子関係も自分と重ねて母になったり娘になったりしていろいろ感じてしまいました。読み応えがあったと思います。( 3月8日)
不当辺三角形 内田康夫 初めての作家さんや翻訳小説のあとには、実に入りやすい内田作品であります。今回は仙台箪笥、愛知と奥松島、五言絶句などなど・・ 出だしにはこの馴染み具合にホッとしたのですが、犯人がちょっとお手軽過ぎて、プロットなしもいかがなものかしらん?と今回ばかりは思ってしまいましたよ。センセ、最初は全然そんな積もりはなく登場させたでしょ。伏線もなかったし、最初の人物描写も犯人としてはどうかなぁ〜〜(3月 5日)
勇者にふられた姫君 L.スプレイグ ディ・キャンプ
デイヴィッド ドレイク
しっちゃかめっちゃかなわらしべ長者的ハッピーエンドなのに、当事者のロリン・ホウバートはひたすら尻込みと不満だけ。面白かったけれども、その突然魔法使いに連れられて行った世界がなかなか難解で、分かるけれども入り込めず、読み進むのに難儀しました。トリビュートというべき別の作家さんの「兎になった姫君」はそれを踏まえて読めたし、短いだけでもありがたく、最後はニヤリ、でありました。(2月20日)
五龍世界(WOOLONG WORLD)―霧廟に臥す龍 壁井ユカコ 道士の卵のユギが成長していく物語ですが、『蠱』を扱うことがこの世界であらねばならなかった理由でしょうけれど、実は私はあんまり面白くなかったかも(;^_^A 『蠱』以外はよくあるパターンとよくあるキャラで、海千山千になってしまった自分にはもう少し羽目を外したスケールとか、目から鱗のような恋愛でもないとね。ありきたり、って思ってしまいました。(2月15日)
陰陽師 天鼓ノ巻 夢枕獏 今回は蝉丸の琵琶と博雅の笛、散る桜、風のない宵、美味しいお酒・・みたいな8編、やっぱりよいですわん。まったりゆったりとした中に濃い情が溢れていますが、清明と博雅の前だと、安心して傍観できます。人はみな、幸せにならねばね。(2月10日)
貴族探偵 麻耶雄嵩 探偵が趣味の貴族様は、実は自分じゃまったく推理をしないのでありました。でも執事、運転手、メイドなどがご主人の為に鮮やかに謎を解き明かす〜〜 短編集でありますが、貴族然としている主人公に慣れると、こっちまで大金持ちになった気分。本格がどーの、はよく分かりませんが、どれも面白かったです(^-^)(2月5日)
京都怪談 おじゃみ 神狛しず 第4回『幽』怪談文学賞・短編部門大賞受賞の京都怪談短編集です。収録作品は「おじゃみ」「前妻さん」「増殖」「虫籠窓」「正体見たり……」「安全地帯」最初のおじゃみなんて、本当に恐くて、挫折しちゃおうかな?と思いながら最後までよんじゃいました(^^;ゞ でも次の前妻さんは後妻さんの強さでなんとか読み進み、そのうちその不思議な雰囲気にすっかり飲み込まれてる、という感じで、京都弁での文章は相性がよかったです。(1月25日)
KI・DO・U 杉本蓮 モバイル人間型コンピュータと、その持ち主になった深優姫の、なかなかにスリリングな関係。美貌なのに柄が悪くてロボット三原則(なんてのはここには出てこないが)に反するような人造人間に、父親のせいで世を拗ねている娘が、ワケの分からない敵に襲われたり封印が解かれていったり、だんだん規模が広がってとんでもないことになっていますが、とりあえず面白かったのでなによりでしたm(__)m(1月15日)
アリアドネの弾丸 海堂尊 バチスタでどっぷりと填ったものの、その後の二作で着いて行けなくなってしまったのに、またまた手にとってしまった田口、白鳥コンビ。 死亡原因の診断をしようという意図でAIセンターを立ち上げるべく動いているが、司法と医療の闘いみたいな様相になってきて、ついに3人が死んじゃうのでありますよぉ。高性能の医療機器、クラシック、司法側のスナイパー(?)、火喰い鳥白鳥が他のプロフェッショナルと組んで濡れ衣を晴らそうと働くワしゃべりまくるワ・・それに腹黒狸の病院長やら、同じ穴の狢(?)の愚痴外来のベテラン看護士まで絡んで、こっちの感情も上がったり下がったり青ざめたり高笑いしたり、なかなか心臓に来る一冊でした。でも疲れるのよね・・ 年だから、こんなに興奮しなくてもいい本がベターかも。。。( 1月 5日)

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